川田過労自殺事件の不当判決に対する声明

  本日、東京地方裁判所第36民事部(裁判長・渡邊弘)は、川田過労自殺事件について、亡・川田直さんの自殺の原因となったうつ病が業務上のストレスのために発症したものではないとして労災補償給付を不支給とした三鷹労働基準監督署長の不当処分を追認し、原告の請求を棄却する不当判決を言い渡した。

  本件は、大学卒業後96年4月に(株)会社みずほトラストシステムズ(旧称・安田コンピューターシステム)にSE(システムエンジニア)として入社した川田直さんが、うつ病に罹患し、入社後わずか半年足らずで自殺を余儀なくされたという痛ましい事件である。当時若干24歳の直さんは、本来であれば、基礎的な技術を一つひとつマスターしながらSEとしての経験を広げていき、前途洋々たる人生を歩むことができたはずである。ところが、会社は十分な研修や指導・教育を行わず、コンピューター労働及び新入社員の特性に何ら配慮をせずに、直さんにその技術力を遙かに超える仕事を与えた。直さんは、過度なストレスにさらされて病気を発症・増悪させ、さらに退職届の提出後も出勤を求められ、自殺へと追い込まれた。直さんには、業務以外に病気を発症させるようなストレスがなかったことは、国も争わないところであった。

  しかるに、本日の判決は、被告会社の新入社員に対する研修や指導・教育等の不十分さを指摘しながら、直さんの病気が会社の業務を原因とするものであることを否定した。極めて許し難い判決である。
  いま、若者の不安定な雇用が社会問題化している一方で、正社員についても長時間超過密労働が横行している。本件は、とりわけ若者の使い捨てともいえる劣悪な労働条件が横行し、メンタルヘルス対策が急がれる金融業関係のコンピューター労働現場で発生した事件である。本日の判決は、被災労働者の置かれた環境を何ら具体的に考慮することなく、形式的に「判断指針」を用いて労災保険による救済を拒否する労働行政を追認したものであり、到底容認できない。

  私たちは、本日の不当判決に断固抗議するとともに、これに屈することなく、判決の見直しを求めるたたかいをすすめるものである。あわせて、国に対して、「判断指針」の形式的な運用を見直すたたかいをいっそう広げると同時に、会社に対しても、二度と本件のような痛ましい犠牲を生まないよう職場環境を抜本的にあらため、労働者の命を守る責任を果たすよう強く求めるものである。
                         2008年5月26日
                         川田過労自殺事件弁護団
                         川田直さんの労災認定を勝ちとる会